Introduction


 日本において競馬といえばダービーや有馬記念をはじめとする平地競争を差し、障害競馬の存在はそもそも一般にはさほど知られておりません。しかし、巨大な競馬産業において、障害競馬は平地競争及び繋駕速歩競走と並んで重要な地位を占めています。日本でこそ平地競馬と比べるとその規模は非常に小さい障害競馬ですが、世界的に見ればヨーロッパを中心に数多くの競争が行われています。

 特にイギリス、アイルランドでは平地競争よりも障害競走の方が人気があると言われており、その規模は世界的な競馬大国であるイギリス・アイルランドの中でも、平地競争に匹敵するものを持っています。例えばイギリスのAintree競馬場で行われるGrand National (G3)は、国内における高い人気は勿論のこと、各国にそれを模範とする競争が設置され、世界的な障害競馬の中心となっています。クールモアスタッドの存在で知られるアイルランドは、平地競争よりも障害競走の方がレース数が多くなっています。この2か国では障害競走の人気は平地競争のそれを凌駕します。また、非常に数多くの競馬場を擁するフランスでは、レースレベルや人馬の技術といった高い水準はさることながら、障害競走の裾野も大きく広がっており、サラブレッドだけではなく、AQPSを含めた馬が障害競馬に出走しています。また、チェコ競馬産業は比較的小規模ではありますが、チェコ障害競馬の頂点であるVelká Pardubickáは、欧州障害競馬ファンを中心に熱狂的な人気を集めており、10月のPardubice競馬場では非常に白熱したハイレベルな障害競走を見ることが出来ます。

 これらの国の間では、障害競馬の形態に大きな差異があることもまた特徴です。イギリス・アイルランドではHurdleの他、馬が掻き分けることがほぼ不可能なほど密な障害を使用する一方で、フランスでは生垣障害、水壕障害、石垣、竹柵障害などの多様な障害を使用します。チェコではどちらかというとクロスカントリーに近い障害競走が実施されています。

 このように、障害競走はヨーロッパを中心に、平地競争以上に多様な発展を遂げており、各国において独特で巨大な産業を形成しています。

 

 一方で、そもそも競馬のシステムが国によって異なる障害競馬において、日本障害競馬はとりわけ他国と比べると非常に特殊な背景を有しており、これが海外障害競馬に対する理解を妨げ、日本における海外障害競馬に対する拒否反応を生じる要因となっていることも事実です。

 

 ここでは各国の障害競馬を見る上で基礎となるシステムについて簡単に書いておきます。障害競馬を見る上での一助となれば幸いです。