4. Fatalities


  さて、今回のコラムの趣旨とは異なりますが、やはり競走中のアクシデントというとその転帰が気になるものです。ひとまずその転帰を追いかけるのが容易な主要レースのみ比較してみましょう。Preliminaryな結果ですし、Controversialな内容ですので、嫌な方は回れ右で。また、中の人は安直な動物愛護運動は嫌いですので、その辺りはご了承を。

Figure 8 競走中止に占める予後不良(死亡)の割合(%)

 Figure 8は2000-2018年における競走中止数に占める予後不良の割合です。中山グランドジャンプと中山大障害は、ここまで見てきたとおり傾向が変わらないため、サンプル数の確保のために合算値としました。

 Grand Nationalでは2012年のSynchronisedとAccording to Peteを最後に、この間で計11頭のレース中の事故に伴う死亡がありました。一方でVelká Pardubickáでは2018年のVicodyをはじめ9頭、中山グランドジャンプと中山大障害の合算では7頭となっています(2013年中山大障害のメルシーエイタイムは安楽死処分の可能性のある重症であり、その後当時の故障が原因で亡くなっているのですが、手術が可能であったという意味で省きました)。中山のJG1の2レースは、他のレースと比較してやはり途中棄権による競争中止がない分、競争中止が生じた際のFatality Rateは高く算出されていますね。

Figure 9 落馬競走中止に占める予後不良(死亡)の割合(%)

 一方で、母数をFall及びUnseated Rider(要するに、落馬転倒)のみに変更し、故障の発生原因を障害飛越時の転倒のみに絞るとやや様変わりします。Figure 8から、Grand Nationalは(空馬として)走行している際の事故が原因であるHear The Echo、McKelvey、及びGraphic Approachの3頭は除外して算出しました(ただし、空馬として障害飛越を試みた結果であるSynchronisedは含めました)。Velká PardubickáではChalco、Polárníkを除外しています。

 中山グランドジャンプ・中山大障害は7頭中3頭が落馬による故障が原因ですので、若干割合は落ちますが、やはりVelká Pardubickáよりも同程度か、微妙に高い割合となっています。Velká Pardubickáでは主にスピードが必要な生垣障害を使用することから、使用する障害の性質が類似しているということもあるのかもしれません。むしろ、中山グランドジャンプ・中山大障害は平地部分での事故が目につきますね(7頭中4頭がそのような事故です、ただし日本の途中棄権の性質は海外のそれとは異なっており、母数を途中棄権とした際の割合の比較に意味はないので、ここでは算出していません)。

 

 ちなみに、Velká Pardubickáにおける最難関障害として名高いTaxisův příkop(Taxis Ditch)は、2000~2018年の間にVicody、Zulejka、Czesimyrの3頭の死亡事故を起こしています。

Figure 10 出走馬数に対する予後不良(死亡)の割合(%)

 一方で、競走中の事故で落命した馬の数を単純に出走馬数で割ったのがFigure10です。日本の2レースはそもそものアクシデントの割合がGrand NationalやVelká Pardubickáと比較すると非常に低く、結果的にGrand Nationalと同程度の数値となっています。ここまで見てくると、落馬した際のリスクはVelká Pardubickáと中山では同程度ですが、平地部分でのリスクは中山の方が高く、そもそもの飛越時における落馬のリスクはVelká Pardubickáの方が高いため、総合的にVelká Pardubickáの方が全体のリスクは上、と考えられるでしょうか。ただし、Velká Pardubickáの場合、そのほとんどの原因はTaxisův příkop(Taxis Ditch)に依るものであると考えられます。

 それにしても、2000~2018年を合算した場合、完走率の高さに比して中山グランドジャンプ・中山大障害における事故率はやはり気になりますね。ただし、この間において日本においては様々なトレンドの変遷がありましたし、両JG1を合わせても2015年のアポロマーベリックを最後に大きな事故は生じていません。馬が障害を飛越する以上、100%安全であることはあり得ないのですが、次の10年における傾向はまた変わっているのではないでしょうか。