2. About Grand National


 写真はAintree競馬場にあるRed Rum像。レース前は閑散としており一見居心地がよさそうですが、レースが始まると人がわらわら集まってきてとてもぼっちでは近寄れません。まずはFigure 1をもう一度見てみましょう。

Figure 1 各国主要競走の完走率・落馬率・途中棄権率

 Grand Nationalの完走率は各国主要競走の中では最低ですが、これと似たような完走率を示すのがIrish Grand Nationalです。しかしIrish Grand Nationalの競争中止理由としては途中棄権が大半を占めるのに対して、Grand Nationalの競争中止理由としては落馬が途中棄権を上回ります。やはりAintree競馬場のNational Fenceは高度に鍛え上げられたイギリス・アイルランド調教馬にとっても難易度は高いのです。このようなGrand Nationalと同様の傾向を示すのがチェコのVelká Pardubickáで、もう少しマイルドにした傾向があるのがGrand Steeplchase de ParisとGran Premio Meranoです。ただし、Grand Steeplchase de ParisとGram Premio Meranoとを比較すると、Gran Premio Meranoの方が落馬の割合は多くなっています。いずれも通常のSteeplechaseで使用されるコースで行われますが、Grand Steeplchase de Parisの出走馬はほとんどがAuteuil競馬場を走り慣れたフランス調教馬であり、わずかながらイギリス・アイルランド調教馬が出走する一方で、Gran Premio Meranoは国外からの参戦馬が多く、通常競走とは異なる乱ペースがしばしば発生するのがその一因かもしれません。Gran Premio Meranoは5000メートルと主要競走としては距離がさほど長くなく、ペースが上がりやすいことも要因の一つとして挙げられます。(また、Auteuilのコースはやたらと広い一方で、Meranoのコースは狭く複雑であり、フランスBull Finchクラスの巨大な生垣障害が存在するにも関わらず馬群が密集してレースが進行するため、多重落馬が生じている可能性もあります)

 

 もう少し詳しくイギリス障害競走の特徴を見てみましょう。

Figure 4 イギリス主要競走の完走率・落馬率・途中棄権率

 イギリスG1として、24fのCheltenham Gold Cupと16fのChampion Hurdleを並べるのはいまいち比較対象として宜しくないため、16fのQueen Mother Champion Chaseと24fのStayers' Hurdleを加えました。傾向としてはほぼ同様のものを示しています。やはりスピードが出るQueen Mother Champion Chaseの方がCheltenham Gold Cupよりも、Champion Hurdleの方がStayers' Hurdleよりも若干落馬率が高いものの、途中棄権率が低いため最終的な完走率は上がっています。

 また、重馬場で行われることの多いWelsh Grand National、良馬場で行われることの多いScottish Grand National、ハンデ重賞の一例としてLadbrokes Trophyを加えました(Table.1)。落馬率はほぼ同様の数値である一方で、Scottish Grand Nationalの方が若干途中棄権率が高くなっています。これは出走数がWelsh Nationalは15~20頭、Scottish Nationalが30頭近くと、Scottish Grand Nationalの方が上回っていることに起因していると考えられます(また、距離もScottish Nationalが4m110y、Welsh Nationalは3m5fとScottish Nationalの方が長距離を走ります)。また、時期的にScottish Grand Nationalはシーズン終盤で馬に疲労が蓄積しており、往々にしてそのような馬は早々に諦めることが多いのが原因かもしれません。同じハンデ重賞でもLadbrokes Trophyの完走率は同様の出走数であるWelsh Nationalと比べて高く算出されましたが、これはLadbrokes TrophyはSoft~Goodで行われている一方で、Welsh NationalはSoft~Heavyでのレースとなっており、Welsh Nationalの方がタフなレースとなっていることがその理由かと考えられます。また、Welsh Nationalが行われるChepstow競馬場のコースは、起伏の激しい非常にタフなものとなっていることもその一因として挙げられます。

Table 1 イギリス・アイルランド主要ハンデ競走の馬場状態

 いずれにせよ、Irish Grand Nationalの性質としては、他のハンデ重賞であるWelsh NationalやScottish Nationalとさほど変わらないような傾向を示しています。

 なお、近年Grand Nationalに向けたレースとしてその重要性が際立っているCheltenham FestivalのGlenfarclas Cross Countryですが、案外落馬率は低く、Cheltenham Gold Cupと同様の傾向を示しています。途中で諦める馬はそこそこ多いようですが。

 

 このように、他の超長距離ハンデ重賞と比較してもGrand Nationalの特異性は際立ちます。こう考えると、ハンデ重賞であることよりも、Grand Nationalで使用する特殊な障害、National Fenceに原因があるように考えられますね。では、National Fenceを使用するレースと比較してみましょう。


1. Principle Races←                     →3. National Fence and Cross Country